2008.03.09 (Sun)
はさみのこと About Scirrosrs・・・

以前にも紹介したことのあるはさみのことです。
15年ほど前、ぼろぼろの革のケースに入ったはさみを祖母から貰い受けました。
小さい頃から「なんて汚いケースなんだろう・・・」と知っているものでしたが、
そのはさみが80数年前にドイツに留学していた明治生まれの祖父のものだということ、
そして刃物で有名なSolingenのHenckel社のものだということは、その時初めて知りました。
医師をしていた祖父は留学先で、日本のものとは違う洋鋏を、美しいと思ってもとめたのでしょうか。
医療用のはさみではないので、祖母へのお土産だったのかもしれません。
そんな思い入れのある品物でしたが、あまりに状態が悪く、修理してもらおうと
日本の代理店に電話で問い合わせたところ、「できません」の一点張り。
ならば・・・!となんとか調べてドイツの本社に手紙とはさみのカラーコピーを送ってみました。
何かしら返事がくることを祈りながら、でも駄目でもともと・・・と自分であきらめようとしていた矢先、
返事が来たのです。しかも社長直々に・・・!
「おじい様の思い出の品を、私どものクラフトマンが必ずや元通りにしてみせますから
すぐにドイツに送ってください。」という心強い言葉と一緒に。

一ヶ月ほど過ぎたでしょうか、小包が送られてきました。
修理の行程がわかるように、それぞれ3枚の写真が同封されていました。
↑左から、錆び付いていた元の状態、中はねじをはずし、錆を落とした状態、右が磨きをかけ、
金メッキをほどこしたもの。

こちらも同様です。 始めはHenckelの文字もほとんど見えなかったものがきれいに
磨かれ、新品同様になって帰ってきました。

小包には請求書がはいっていなかったので、その旨、手紙を出したところ、先方からの返事がまた
私を感激させてくれました。
「おじい様は私共の古いお客様です。このはさみはそのおじい様からあなたの手に渡ったもの。
お代をいただくわけには参りません。 これからも末永く大事にお使いください。
それが私共の喜びです。」
古いものですが、棚に飾るのでなく実用に使う主義なので、それから毎日のように
このはさみたちは活躍してくれています。ぼろぼろだったケースはそのまま引き出しにしまい、
敬意を表してカルトナージュでケースを作り変えました。
ドイツのクラフトマンシップ、マイスターのプライドが、時間も、距離も遠く離れた私の手元で
今日も息づいています。
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